ビジネス小論文講義資料

 2019.5.7(火)14時―16時

                               就活実践力アップ小論文講義資料

                                    (於東京しごとセンター

小論文特別講座

-わかりやすく伝える工夫-

國學院大學兼任講師・大東文化大学非常勤講師・

西帝京学苑講師・TAC講師

岡田 誠

(キーワード)

発想法 箇条書き 図解 句読点 文章心理学 

パラグラフ・ライティング ビジネス文書

 

 

文章を書くには、第一に発想が大切である。そして、第二に、そのテーマに対しての関心度の高さや表現の方法が大切である。表現の方法としては、文と文とのつながりと、論理展開の二つが重要である。本講義では、文章を書くための発想法からパラグラフ・ライティング、ビジネス文書までを順に述べていくことにする。

 

1.発想法

 

発想については、可視化が重要である。そのために、紙に書き出すことが行われている(注1)。特に、有名なものとしては、「ブレイン・ストーミング」と「KJ法」があげられる。この二つは、「アカデミック・スキル」と呼ばれる分野においても採用されている。

「ブレイン・ストーミング」とは、グループワークで行われる方法で、批判せずにアイデアを次々に紙に書き出していき、アイデアが出つくしたところで、一つ一つのアイデアを検討していく方法である(注2)。これは、個人で行ってもよい。大切なことは、アイデアを出すことなので、どのように稚拙なものであっても、書き出すことである。まさに、「ブレイン・ストーミング(日本語訳「脳の嵐」)」である。この流れで、近年はトニー・ブザンの「マインド・マップ」と呼ばれる流れもある。

この「ブレイン・ストーミング」を整理した形式で評価の高いのは、川喜田二郎(1967・1970)の考案した「KJ法」である。大きめのカード(「京学型カード」と呼ばれる)を用意し、一項目ずつ書いたものを分類・整理する方法である。この原型として、新井白石が絶えず紙の束を持ち歩き、一枚ごとに気づいたことや興味のあることを筆で書きつけ、それを分類・整理した記述があげられる。まさに可視化である。これらの技法を分類・整理・応用した「学習法」「アカデミック・スキル」の原型として、梅棹忠夫(1969)、渡部昇一(1976)、竹内均(1980)などの著作がある。

 

2.文章を書く前のメモ

 

文章を書く前には、この「ブレイン・ストーミング」や「KJ法」を参考にメモをして、目次を作成するとよいであろう。つまり、「述べたいこと」をメモし、その理由づけを2から3点ほどメモするのである。この際のメモは、箇条書き、あるいは図解で行うとまとめやすい。(注3)。これは可視化することで書きやすくなり、整理されるのである。その理由の中に証拠として、「具体例・データ・体験談」なども交えるとよい。その上で、文章を組み立てていくとよい。

 

2.文章の二つのタイプ

 

文章は大きく、「情報伝達型の文章」と「自己表現型の文章」に分けることができる。日本では、芦田恵之助以降、小砂丘忠義、無着成恭大村はまに見られるように、「随意選題」と呼ばれる「生活綴り方運動」の流れがあるため、初等教育中等教育では、型にはめない「自己表現型」の文章傾向がある。それに対して、学術論文やビジネスの世界では、文章構成としては、わかりやすく結論を先に述べ、最後に軽く締めくくる「情報伝達型」の文章傾向がある。この背景には、英語圏で広まってきた「パラグラフ・ライティング(アカデミック・ライティング)」と呼ばれる文章のスタイルの影響も大きい。以下に、「情報伝達型の文章」と「自己表現型の文章」の特徴をまとめてみる(注4)。

 

a.情報伝達型の文章

新聞や週刊誌の文章、ビジネス文書など何らかの形で情報を伝えることを目的とした文章。事実の正確さや、論理性が求められる。(事実と意見を分ける・演繹法帰納法)。適切に接続詞が使用される。

b.自己表現型の文章

小説、随筆など何らかの形で自分を表現することを目的とした文章。共感や情感に訴えようとする。接続詞は少なめに使用される。

 

3.文章構成

 

日本の文章構成に一石を投じたのは、森岡健二(1978)であった。森岡健二(1978)は、欧米型の文章構成に刺激を受けて執筆したという、文章構成の分野での名著である。森岡健二(1978)の示した文章構成に文章論での重要事項を加えて、以下のように整理してみる。

 

1文章の運びの分類

a序論→本論→結論

b起→承→転→結

c一般から特殊へ・特殊から一般へ

d原因から結果へ・結果から原因へ

e既存から未知へ

ラクス『技巧(テクネ)』・・史上初のレトリック教科書

序論→叙述(説明)→論述(「たしからしさ」による説明)→補説(補足)→結語

デカルト

二元論(二項対立)

ヘーゲル弁証法」(議論することで真理に近づく方法)

正・反・合→反対意見の想定・論を磨く

2文章の構造の分類

a頭括型・尾括型・双括型

b分括型・潜括型

3文章の性質の分類

a文章の調子・・韻文と散文

b表現方法・・文語と口語

c表現意図・・実用的文章と非実用的文章

 

文章の書き出しについては、時枝誠記(1960)・市川孝(1978)が「文章の冒頭の書きおこしの9分類」として以下のように整理している。

 

文章の冒頭の書きおこしの9分類

1主題・主旨・結論・提案などを述べる。「要するにこういうことをいおうとしているのだ」ということを冒頭に置く。

2話題もしくは課題について述べる。これは1のような中心的内容を示すのではなく、その文章で叙述しようとする話題もしくは課題そのものの輪郭を前もってあげておく場合である。作文などで、「きのう○○へ遠足に行きました。」とまず述べて、以下、その時の様子を詳しく叙述するのもこれにあたる。

3あら筋・筋書を圧縮して述べる。

4筆者の口上・執筆態度を述べる。

5叙述内容のあらかじめ枠をはめる。「以下は○○君から聞いた話である。」「これは昨年末、東京のどまんなかで起こった事件である。」「1927年の秋のことであった。」など。漱石の『夢十夜』の「こんな夢を見た。六つになる子供を負(おぶ)つてゐる。」などもこれである。

6時・所・登場人物などを紹介する。

7主内容の糸口となる枕をおく。

8主内容と対比的な内容を述べる。

9いきなり本題の一部に入ってゆき、前置き(導入)を置かない。冒頭のない文章。

 

同様に、市川孝(1978)は、「文章の結びの型」として以下のように整理している。

 

文章の結びの型

A叙述内容の集約としての末尾

1その文章において述べようとした中心的内容(主題・主旨)を、末尾でまとめるもの。

2「以上、真の自由とは何かということについて考えてみた。」のように、その文章で扱った話題もしくは課題を、末尾にまとめてしめくくりとするもの。

3あら筋・筋書を述べるもの。

B主内容に対する付けたしとしての末尾

1「ただ述べたいこともありますが、ともかくみなさんにわかっていただきたいと思い、二、三の主なことを書き付けた次第です。」などのように、筆者の立場・意向・態度・ことわりなどを述べる。

2それまでの叙述全体を受けて「以上は、われわれのグループで話し合った結果をまとめて述べたものです。」「まだ私が幼かったころのできごとです。」などのように叙述内容に枠をはめるもの。

3主内容の叙述のあとに、感想や反省を述べたり、別の問題を提起したりして、しめくくりとするもの。

C主内容を構成する一部としての末尾

主内容の一端を叙述して、文章を終わらせるもの。近代小説などのように、場面の描写などで終わらせるもの。

 

4.文章心理学

 

波多野完治(1962)の提唱した「文章心理学」という分野がある。この分野での文章論への貢献は、多大なものがある(注5)。以下に、文章心理学の成果が取り入れられた事項について示してみる。

 

4.1句読点

 

句読点の機能としては、主に「休止の機能」「論理の明確化」が指摘されている。句読点の研究としては、主に文語文に適応させた権田直助『国文句読法』を嚆矢として、明治39年2月の文部省大臣官房調査課草案の「句読法(案)」が文語文に対応したものを示し、昭和21年3月の文部省国語調査室編「くぎり符号の使い方(句読法)(案)」が現代口語文(官公庁や学校の教科書ではこのルールで統一)に対応したものを示している(注4)。芳賀綏(1962)は、句読点の項目で、句読点の与える印象について以下の例を示している(pp.141-142)。この例は句読点を意識するうえで、非常に印象的である。

 

〈感覚的に用いた句読点の例〉谷崎潤一郎春琴抄

おしやべりをしないから邪魔にならぬからといふのが果たして春琴の真意であつたか佐助の憧憬の一念がおぼろげに通じて子供ながらもそれを嬉しく思つたのではなかつたのか十歳の少女にさういふことは有り得ないとも考えられるが、俊敏で早熟の上に盲目になつた結果として第六感の神経が研ぎ澄まされてもゐたことを思ふと必ずしも突飛な想像であるとはいへない気位の高い春琴は後に恋愛を意識するやうになつてからでも胸中を打ち明けず久しい間佐助に許さなかつたのである。

〈句読点愛用者の例〉直木三十五『明暗三世相』

その当初、外様大名の、策謀を恐れ、その所領の国々に、程よく案配し、外様、新藩、外様と並べて、隣国同志にて、互いに、落度を見つけさせ、反目させ、警戒させ、団結を防ぎましたが、このために、天下は今日まで、続きましてございます。

 

句読点は主に初等教育の内容ではあるが、添削を行うと不統一を感じることが多い。改めて文部省国語調査室編「くぎり符号の使い方」と文化庁の「公用文における漢字使用について」を学生に紹介して表記への意識づけを行いたいものである。

 

4.2かな表記

 

「公用文における漢字使用等について」(平成23年)では、「接続詞」「副詞」「形式名詞」「補助動詞」などは、ひらがなで表記することが推奨されている。その中に、「できる」も入っている。安本美典(2001)が「漢字についてのモノサシ」を示しているので、照らし合わせるのもよいと思う。

 

「漢字についてのモノサシ-安本美典(2001)-」

1000字あたりの漢字の数

評価

相当する雑誌など

現代作家の文章の中で占める率(『現代日本文学全集』筑摩書房

406字以上

たいへん漢字が多い(大学生程度)

専門雑誌・新聞

7%

353字-405字

漢字がやや多い

(大学生程度)

専門雑誌・新聞

24%

300字-352字

ふつう(高校生、中学生程度)

総合雑誌の文芸小説

38%

247字-299字

漢字がやや少ない(小学生程度)

児童雑誌・大衆雑誌

24%

246字以下

たいへん漢字が少ない(小学生程度)

児童雑誌・大衆雑誌

7%

 

4.3「一文の長さ」

 

一文の長さは、あまり長いと主語・述語のねじれ現象が起きやすいため、ある程度の長さで切ることも大切である。ただし、具体的な文字数になると、意見が異なる。以下、その例である。

 

a.平均で30~35字というところ・・辰濃和男(1994) b.平均で40字ぐらいまで・・中村明(1999)・加藤秀俊(1970) c.40~50字以下・・安本美典(2001)

d.一文が60文字を超えたらわかりにくくなるので、注意が必要・・樋口裕一(2002)

 

文章心理学を創始した波多野完治(1962)によると、一文の長さは1948年の段階では、以下のように新聞は約100字程度であったとのことである。

 

 

ノン・フィクション

新聞

読本

小説

一文の文字数

60.5

97.9

39.2

34.5

 

この結果を公表したところ、新聞社も文字数を気にするようになり、1962年の段階では、新聞は平均60字から70字になったそうである。現在は、一文平均25字から50字という調査がある。この文章心理学を発展させた安本美典(2001)は、以下の表を作成している。

 

「文の長さについてのモノサシ-安本美典(2001)-」

文の平均の長さ

評価

相当する雑誌など

現代作家の文章の中で占める率(『現代日本文学全集』筑摩書房

74字以上

たいへん文が長い(大学生程度)

専門雑誌・新聞

7%

51字-73字

やや文が長い

(大学生程度)

専門雑誌・新聞

24%

37字-50字

ふつう(高校生、中学生程度)

総合雑誌の文芸小説

36%

27字-36字

やや文が短い

(小学生程度)

児童雑誌・大衆雑誌

24%

26字以下

たいへん文が短い(小学生程度)

児童雑誌・大衆雑誌

7%

 

少なくとも、60字から80字を超える文は、主語・述語のねじれ現象などが生じやすくなり、わかりにくい悪文になる可能性があるので、二文に分けるなどの注意が必要である(注6)。

 

4.文章の心理学的効果

 

4.1和語・漢語

 

和語よりも漢語の方が合理的で硬い印象を与える効果がある。例えば、「しつこい・執着」「難しい・難解」などがあげられる。「努力」「活性化」「挑戦」「活動的」などの名詞化した言葉も同様に、動詞の持つプロセスが失われる表現で、合理的で硬い印象を与える。あえて難解な漢語を用いて、知的に見せ、相手をうならせ、感心させる方法もある。

 

4.2「ひらがな」「漢字」

 

「ひらがな」と「漢字」のイメージで文章を書き分ける方法もある。以下に、その特徴をまとめてみる(注7)。

 

漢字の割合が多い・・男性的・硬派なイメージ・相手を威圧したり自分を強そうに見せたりするときに使う。

ひらがなの割合が多い・・女性的・ソフトなイメージ・親しみやすさをアピールするときに使う。

 

4.3「ポジティブな言い回し」と「二面提示」

 

二面提示を行うと、納得するといわれているが、その二面提示を行う際に、言い回しをポジティブにした方が好印象を与えられると言われている。

(例)5分の2は失敗である。→5分の3は成功である。

このテレビは高画質ですばらしい製品だが、寿命が5年程度とやや短い。

 

4.4数値やデータ

 

具体的な数値やデータを使うと納得する傾向がある

(例)非行少年・少女のきわめて多くが、成人してから犯罪者になることが知られている。

→非行少年・少女の80%が、成人してから犯罪者になることが知られている。

非行少年・少女の多くが家庭に問題のあるケースが多い。

→非行少年・少女の62パーセントが家庭に問題のあるケースだという報告がある。

 

4.5権威者の引用

 

引用する際に、権威者のものを使用するのも、読み手を納得させるのによい方法である。

(例)アリストテレスは、「・・・」と述べている。

ノーベル賞のセリエ博士によると「・・・」とのことである。

アインシュタインは、「・・・」という主旨のことを述べている。

 

4.6対比

 

評論などで頻繁に使用されている対比(二元論・二項対立)を使うのも有効である。

(例)科学が進歩しても、戦争はなくならない。

日本は・・。一方、アメリカは・・。

     人間には、「進歩向上したい気持ち」と「怠惰でいたい気持ち」という、相反する気持ちが内在している。

 

5.ビジネス文書の特徴

 

ビジネス文書の場合、手紙文の流れを汲んでいる。そのため、論文・小論文では敬意表現は避ける傾向があるのとは異なり、ビジネス文書では敬意表現が使用される。敬語の根幹となる体系は、尊敬語・謙譲語・丁寧語であるが、日常会話では謙譲語が衰退化しているのだが、ビジネス会話、ビジネス文書では謙譲語が頻繁に使用される。それは、「社内文書」と「社外文書」ともにその傾向がある(注8)。

ビジネス文書で好まれる表現を整理してみると以下のようにパラグラフ・ライティング(アカデミック・ライティング)と共通する書き方であることがわかる。

 

a.わかりやすい表現が重視される。

b.一文は20文字から60文字になっている。

c.結論を先に書き、その後、説明・解説・意見・感想などを書く。

d.欧米文の影響で横書きが好まれる傾向がある

 

次にビジネス文書マニュアルの執筆者による傾向を整理してみる。

a.文学部出身者・・例文に文学的表現が多い

b.法学部・経済学部・経営学部出身者(注9)

c.民間の会社経営者・経営コンサルタント・実業家・秘書

 

ただし、これらのビジネス文書マニュアルには、文化庁文化審議会の答申を反映していないようである。文化庁は、平成19年2月「敬語の指針」を答申によって、「1尊敬語・2謙譲語・3丁寧語」の三分類を、五分類にする案を提出したため、学校教育をはじめ、五分類案で行われることが推奨されているのである。

 

 

以上、文章の発想法から文章心理学、パラグラフ・ライティング、ビジネス文書までを述べた。現在は、わかりやすい文章が好まれる時代になっている。それとともに、欧米型のパラグラフ・ライティングが好まれるようになってきている。今や世界基準とまでいわれることさえあり、自然科学、社会科学、人文科学(一部)などのアカデミズムの世界でも採用され、ビジネスの世界でも好まれるようになっている。そこに、文章心理学の技法も加わり、読み手に伝わりやすい文章の型が定まりつつある。どのように書けばよいのか迷ったら、文章心理学の方法、パラグラフ・ライティングの方法を用いると、わかりやすく、効果的に読み手に伝えることができるため、たいへん効果的である。

 

 

 

 

 

(注)

1.

紙に書き出して可視化する方法は、筆記療法としての方法として、デール・カーネギー(【原書1936】香山晶訳2016)の著作の中で紹介され、「セルフ・カウンセリング」の流れにつながるものである。

2.

この方法の効果として、「ジョハリの窓」の例があげられることが多い。成功例として、「スーパー・ドライ」などが知られている。

3.

箇条書きか図解化については、久恒啓一・樋口裕一(2008)がある。

4

「パラグラフ・ライティング」は、井上逸兵先生(社会言語学)によると、ヴェトナム戦争から復員した学生が、すぐにレポートが書けるように型にはめてパターン化することがスタートとなっているとのことである。その流れがあるため、渡辺雅子(2004)は、日米の初等教育の段階での作文教育の違いを報告し、アメリカは情報伝達型の文章傾向であることを指摘している。しかし、成田信子先生(国語教育)によると、近年の傾向としては、日本の初等教育でも情報伝達型を扱う傾向が増加しているとのことである。

市川孝(1978)は、「文章の種類」について以下のように詳細に分類している。

第一類・・特定の相手に向けて表現される文章

通信の文章・・通常の形式で、意思などを伝える文章。案内状・見舞状・依頼状・令状

告知の文章・・特定の形式で、意思などを告げる文章。通知書・請求書

申告の文章・・当局への願い出・届け出などの文章。休暇願・欠勤届

報知の文章・・調査結果などを報告する文章。上司への報告書・信用調査の報告書

証明の文章・・証拠として交付される文章。免許状・卒業証書

契約の文章・・当事者の間で取り交わされ、後日のために保管される文章。各種の契約書

第二類・・不特定の相手に向けて表現される文章

解説の文章・・物事を分析的に解説・説明する文章。時事解説・新刊紹介

報知の文章・・事件や実情を一般の人に報知する文章。新聞報道記事・経済白書

実録の文章・・実録にもとづいて記述する文章。歴史・伝記・言行録・回顧録

表出の文章・・心の内面にあるものを外部に表し出す文章。感想文・批評文・随筆・紀行文

表明の文章・・意思・見解などを、人前に明示する文章。声明書・宣言文

論説の文章・・論理を展開し、主張を説き明かす文章。論文・評論

宣伝の文章・・相手を共鳴させ、反応を期待する文章。広告文・標語

教戒の文章・・教えを説いて、感化させようとする文章。経典・格言

公示の文章・・決定事項・注意事項などを、おおやけに示し知らせる文章。

お知らせ・プログラム

課題・解答の文章・・課題・質問を示す文章。また、それらについて回答する文章。

問題と答案・レポート

規約の文章・・規範として制定し、交付する文章。規約・法令・条例

第三類・・後日の相手に向けて表現される文章

記録の文章・・文字に定着させて、記録にとどめる文章。観察記録・読書ノート・戸籍簿

5

安本美典(2001)は、「読み継がれる文章論の名著の分類」として以下のように示している。

1文学的文章の考察に重点がおかれたもの。谷崎潤一郎三島由紀夫など

2読み、書き、考える具体的な技術を広く探求したもの。梅棹忠夫立花隆など

3文章についての心理学的考察に重点をおいたもの。波多野完治・中村明など。

4文筆経験の豊富な人がみずからの体験に基づいて書いたもの。扇谷正造本多勝一など。

6

今までの筆者の担当した文章添削では、書きなれていれば、120字までは行けそうな答案も多くみられた。国立大学の入試現代文の記述問題では最大で120字程度であるから、一文120字までは書き慣れていれば、主語・述語のねじれ現象は起きにくいと考えることもできる。

7

 梅棹忠夫の文章は、「ひらがな」の比率を高くすることで文章のわかりやすさ、親しみやすさを出すのに成功した例として有名である。この文章の傾向は、京都大学今西錦司のグループの特徴であるともいわれ、のちに岩波新書のシリーズも、「ひらがな」の比率を高くするようになったといわれている。

8

日本語表現を重視した河田美恵子(2006)をみると、以下のように敬語の項目を立てていることがわかる。

河田美恵子(2006)『ビジネス文書と日本語表現』学文社(目次)

1ビジネス文書の作成に必要な知識

文書の重要性・文書の果たす役割・文書の分類・文書作法の心

2わかりやすく正確に文章を書くための文章作法

文章の構成・正確な文章表現・文体の統一・現代表記法・縦書きと横書き

3敬語表現と敬称

敬語の分類と使い方・敬語表現・宛名の敬称

4日本語表現

話し言葉と書き言葉・言葉遣い・心遣いを表す言葉・断りの言葉

ビジネス文書にとってマイナスイメージの言葉・電報文

5ビジネス文書の能率的な書き方

社内文書の形式と書き方・社外文書の形式と書き方

封筒・返信はがきの書き方と使い方

6文書表現のポイントと留意点

取引上の文書・社交・儀礼的文書・慶弔の文書と忌み言葉

7ビジネスEメールの作成と発信に関する作法

ビジネス環境の変化・Eメールの特性・Eメールの言葉遣い

Eメールの基本的書き方・その他の留意点

8文書の取り扱い

受信、発信文書の取り扱いと通信業務・郵便の基礎知識・押印の知識・押印の仕方

9

堺憲一(2010)は、経済小説から、経済学の知識を得るという試みを提唱し、経済小説を読むことを薦めている。以下に参考までに、著名な経済小説の系譜とビジネス倫理の系譜を示してみる。

a.日本の経済小説の系譜

(中世)

徒然草』『人鏡論』

(近世)

『長者教』

井原西鶴『日本永代蔵』『世間胸算用

(昭和)

城山三郎清水一行高杉良

(平成)

池井戸潤幸田真音

b.日本のビジネス倫理の系譜

(近世)井原西鶴『日本永代蔵』・・金持ちの心得

鈴木正三『万民徳用』・・仏教と経済

石田梅岩『都鄙問答』・・町人学者による心学

(近代)澁澤栄一『論語と算盤』『論語講義』・・道徳経済一致論

(現代)松下幸之助・・水道方式・船場の商人の教え

稲盛和夫・・東洋の帝王学・仏教・儒教

柳井正・・ドラッカー理論

 

参考文献

石黒圭(2008)『文章は接続詞で決まる』光文社

市川孝(1978)『新訂 文章表現法』明治書院

梅棹忠夫(1969)『知的生産の技術』岩波書店

大島弥生・池田玲子・大場理恵子・加納なおみ・高橋淑郎・岩田夏穂(2005)『ピアで学ぶ日本語表現』ひつじ書房

加藤秀俊(1970)『自己表現』中央公論社

河田美恵子(2006)『ビジネス文書と日本語表現』学文社

川端善明(1993)「指示詞」『国文学 解釈と教材の研究』第38巻12号

倉島保美(2012)『論理が伝わる「書く技術」』講談社

斎藤美奈子(2007)『文章読本さん江』筑摩書房

堺憲一(2010)『この経済小説が面白い』(ダイヤモンド社

佐久間まゆみ(2002)「接続詞・指示詞と文連鎖」『日本語の文法4 複文と談話』岩波書店

佐治圭三(1970)「接続詞の分類」『月刊文法』2巻12号

佐藤孝(1970)「接続詞ははたして必要か」『月刊文法』2巻12号

三省堂編修所編(2017)『新しい国語表記ハンドブック』三省堂

ティーブン・R・コヴィー(【原書1989】ジェームス・スキナー 河西茂訳1996)『7つの習慣』キング・ベアー出版

滝浦真人(2016)『日本語リテラシー放送大学教育振興会

滝浦真人(2017)『日本語アカデミックライティング』放送大学教育振興会

竹内均(1980)『私の知的鍛錬法』徳間書店

辰野和夫(1994)『文章の書き方』岩波書店

ダニエル・カーネマン(【原書2011】村井章子訳2012)『ファスト&スロー』早川書房

ダニエル・カーネマン(【原書2011】村井章子訳2012)『ファスト&スロー』早川書房

デール・カーネギー(【原書1936】山口博訳2016)『人を動かす』創元社

デール・カーネギー(【原書1948】香山晶訳2016)『道は開ける』創元社

時枝誠記(1960)『文章研究序説』山田書店

塚原鉄雄(1970)「接続詞-その機能の特殊性-」『月刊文法』2巻12号

永野賢(1958)『学校文法概説』朝倉書店

中村明(1999)『名文作法』PHP研究所

永山勇(1970)「接続詞の誕生と発達」『月刊文法』2巻12号

芳賀綏(1962)『国語表現教室』東京堂

波多野完治(1962)『実用文の書き方 文章心理学的発想法』光文社

樋口裕一(2002)『YESと言わせる文章術』青春出版社

平尾始(2002)『小論文と模範答案』ライオン社

久恒啓一・樋口裕一(2008)『図解vs文章』プレジデント社

湊吉正(1970)「接続詞の境界」『月刊文法』2巻12号

森岡健二(1978)『文章構成法』至文堂

森田良行(1993a)『言語活動と文章論』明治書院

森田良行(1993b)「接続」『国文学 解釈と教材の研究』第38巻12号

吉岡友治(2015)『シカゴスタイルに学ぶ論理的に考え、書く技術』草思社

安本美典(2001)『説得の文章術』宝島社文庫

渡部昇一(1976)『知的生活の方法』講談社

渡辺雅子(2004)『納得の構造 日米初等教育に見る思考表現のスタイル』東洋館出版

 

 

【参考資料1】一般的に小論文で問われやすく、支持されやすい考え方。

-平尾始(2002)を参照し改変-

a.地球環境保護

○先進国の豊かな生活は、資源の大量消費に支えられている。

○資源を供給しているのは途上国である。その結果、途上国の環境は大規模に破壊されている。

○途上国は豊かになろうとしているが、途上国の利用できる資源が不足している。資源の節約と公平な分配が必要である。

○諸問題には、先進国と途上国との話し合い、合意が不可欠である。

環境保護や経済発展に関する先進国と途上国の利害対立を「南北問題」という。

  〇「ライフスタイルを改める」「クリーン・エネルギー開発」「資源保護」「途上国援助」などの対策が必要である。

 

b.消費社会

○消費社会とは、「大量生産・大量消費」が行われている社会のことである。世界中が大量消費すると、資源は枯渇し、ゴミによる環境汚染が生じ、伝統的な暮らしも破壊されてしまう。

○現代の製品は性能や必要によって売れるのではなく、宣伝によって売れる。

○消費社会では「手作り」や「手間をかける」ことの価値が見失われがちである。工業製品は大量生産に向いているが、家庭での食事や学校での教育は、逆に手間をかけることによって質がよくなる。「手間」による「質の向上」も重要である。

※「新商品が欲しい」という消費者の欲望をあおり、商品を買わせることを、「欲望の生産」という。

 

c.日本の国際貢献

○相手の文化や社会を尊重した上で、経済・教育・医療での援助をきっかけに、日本人が消費社会を反省し、異文化と共存する活動ができることができれば、真の国際貢献となる。

○「互いに学びあう援助」を実践しているNGOの活動などを調べると、詳しい議論が可能になる。

○「国際貢献」の目標は「国家間の紛争を話し合いで平和的に解決し、民衆の暮らしを守ることに役に立つ」ことである。

 

d.「民族紛争」の解決

○紛争のほとんどは、経済格差から起こっている。

○国境の内側に住む人々を「一つの国民」と考える国家を「国民国家」と呼ぶ。しかし、日本を含め、一つの国には複数の少数民族が住んでいる。そのため、国民国家のあり方が見直されている。

○民族問題では「地域の独自性を尊重すること」と「国際的に強調すること」の両方が大切である。

国際連合の主要なテーマは「それぞれの文化の個性を認め合いながら、同時に世界的な協力を行う」ことである。cf.文化相対主義レヴィ・ストロース『悲しき熱帯』)

 

e.人口問題

○経済・社会の近代化によって人口増加が始まる。同時に、農業から工業への産業構造の変化が進むが、増加した人口を産業が吸収できない場合、国内・国外の人口移動が起こる。

○過度の人口移動を防ぐには、途上国が国内産業によって自立する必要がある。また、人口抑制には、教育の普及が効果的である。多くの人が中等以上の教育を受ける国では、人口増加が緩やかになる。cf.アリエス『子どもの誕生』

○途上国の自立を先進国が支援し、経済・教育・医療などの分野で近代化を進める必要がある。途上国の人口増加が抑えられれば、世界人口も安定し、環境や食料分配の問題を解決する道が開ける。

※増えた人口は、農村から都市へ、途上国から先進国へ移動する。

 

f.「高齢社会」「超高齢社会」の問題

少子化は先進国に共通の問題である。女性の負担の軽減、子供を育てる環境の整備を充実させることが、人口増加には欠かせない。

○高齢者も仕事を続けたり、ボランティア活動で相互に支えあったりすることで自立

し、同時に若い世代の負担を減らすことができる可能性も考える必要がある。

○若い世代と高齢世代との協力関係を「世代間の合意」と呼ぶ。

※高齢社会は、高齢者の増加と子供の減少の両方が原因となっている。

cf.少子化の原因

1.専門職志向と男女の高学歴化

2.晩婚化・晩産化

3.女性の高学歴化に伴う意識変化

4.子どもの養育費の高騰

5.大都市における住宅条件の限界

6.公的生活保障の機会が、ある程度充実したことによる子どもに対する依存度の減少。

森永卓郎(1997)『非婚のすすめ』講談社現代新書

少子化」のメリット

1.住宅問題の解決

2.財政の好転

3.通勤地獄の解消

4.レジャーコストの減少

5.高齢者や女性の基幹的雇用の促進

6.交通渋滞の解消

7.食糧自給率の向上

8.自然環境の維持

9.大都市集中の緩和

 

g.豊かな生き方

○「物の豊かさ」から「精神的な豊かさ」の時代になってきている。

○若者のフリーター志向は、サラリーマン以外の様々な仕事を知らないからとも言われている。自分の興味がある分野を調べるとよい。

バブル経済の時代以降、「お金を生み出すものにしか価値がない」という考え方が広がっているが、これを見直す必要がある。

※他の人々と共に生きる社会のあり方を「共生社会」という。

 

h.男女平等社会

○「男は仕事、女は家庭」という「性別役割分業」という考え方は、男女差別の一因である。農業社会では、女性も男性と同様に働く。企業中心の社会になってから、女性が家庭中心の生活をするようになった。

○生物学的な性の区別を「セックス」、社会的な性の区別を「ジェンダー」という。生物学的な性は、生まれたときから決まっていて、変更はできない。一方、「ジェンダー」は「男らしさ」「女らしさ」と結びついていて、時代や地域によって考え方が変わる。「男らしさ」「女らしさ」は変化しないという考え方には、問題がある。

※男女平等社会のことを、「男女共同参画社会」ともいう。

 

i.「家族」のあり方

核家族化と都市化が人間関係を希薄にしているとされている。

○もっとも基本的な社会集団は家族である。家族が地域社会を作り、「安心できる地域社会」がより大きな「信頼できる地方自治体」や「安定した国」を作る。家族が機能しない社会では、多くの人が不安を感じながら生きることになる。家族の重要性はそこにある。

※「核家族」とは夫婦と子供だけの家族を指す。核家族は、祖父母や親類と離れて生活しているのが普通である。サラリーマンの人口が増え、転勤する人が多くなり、核家族が増える。

 

j.学校での「いじめ」

○均質化・画一化重視・集団主義的で、多様性を認めない社会のあり方が根本的な原因であるといわれている。少数者差別は、人権侵害にあたる。

○学校に多様な生徒を受け入れる態勢があれば、障害を持つ人や異文化を持つ人も一般の人と同じ学校に通える。しかし、実際には「人手不足」や「対応の仕方がわからない」という理由で、一定の枠に収まる子供しか学校に行けないという問題がある。

※一人ひとりのすべての違いが「個性」を作り上げている。個性は誰にでもあるものである。

 

k.死の教育

○優れた童話は「悲しい話」や「残酷な話」によって、むしろ、「死の重さ」を幼い子供にわかりやすく感じさせる役割を持っている。「夢のある話」だけでは子供の成長に不足である。

○「死」や「病気」に接することで、かえって自分や他人の生命の大切さが理解できる。高齢者との触れあいや生き物の世話を通じた「死の教育」は、他者を尊重するための教育でもある。

※「死の教育」とは、死について教える教育のことであり、幼い子供から青年や中高年の人まで、すべての世代に必要である。

 

l.医療従事者と患者との関係

○病院はキュア(治療)だけの場所でなく、ケア(癒し・介護)の場でもあることが重視されている。「病気」だけを見るのではなくて、「病者としての人間」を見る視点が重要である。

○現代では、患者が自分の「適切な医療を受ける権利」を守るために、医療従事者は必要な情報を公開する義務があると考えられている。これを「患者の権利」という。

○十分に説明され、理解したうえで治療に同意する「インフォームド・コンセント」や納得できないときには複数の医師から意見を聞く「セカンド・オピニオン」も患者の権利である。

社会福祉などの相談を受ける専門家である「ケースワーカー」を配置するなどの配慮も必要である。ケースワーカーは、医療機関に医療従事者と患者との間をつなぐ役割がある。

 

m.異文化理解

○異文化理解とは、異なった価値観、生活習慣を持つ人々がその異質性を尊重され、多様性が認められることである。どのような文化も、異文化を取り入れた融合文化である。

○異文化を尊重し、自分とは異質な人々も受け入れる社会では、障害を持つ人や高齢者も尊重される。「異文化理解」は外国の文化について言うだけではなく、社会の内部に住む多様な人々が協力し合って生きていくうえでも非常に重要である。

※偏見なく異文化と接する考え方を「文化相対主義」という。また、自分の国の文化を「自文化」、他の国の文化を「異文化」と呼ぶ。

 

n.ボランティア活動

○ボランティア活動では、「他人の生き方に触れる」ことから、自分の知らなかった「新しいものの見方や生き方」を学ぶことが多い。

○ボランティアとは、ラテン語の「欲する」という語から生まれたことばであるから、「自分からやりたくなって行う活動」のことである。「人のため」や「犠牲的精神」で行うものではない。強制や利益目的の活動はボランティアとはいえない。

※自分を相手の立場から見ることを「自己相対化」と呼ぶ。

 

o.高度情報化社会

○インターネットは便利であるが、使いこなすには「自分で情報を集め、必要な情報を選び、内容を理解する」ことが不可欠である。そのためには、読書や社会的活動を積み重ねることが必要である。

○良い面としては「いつでも利用でき、仮想現実も経験できる」ことがあげられる。悪い面としては、「個人のプライバシーが侵害され、社会的に管理・画一化され、情報量に圧倒され、情報の正誤がわからず、主体性を失う可能性がある」ことがあげられる。

※高度情報化社会とは、コンピュータとインターネットのようなネットワークによって、情報が大量に集められ、保存・編集され、有償・無償で誰にでも提供される社会のことである。

 

p.科学技術と人間

○科学技術の利用や安全性の決定には、一般の人々も参加すべきである。科学は「善悪」や「美」を判断する基準を持っていない。

○科学の進む方向をコントロールするために、「環境倫理」や「生命倫理」などの指針が必要だといわれている。20世紀は、医学の進歩やコンピュータの発明によって、科学技術が人類に大きな恩恵をもたらすと同時に、核兵器の登場や自然破壊によって人類の滅亡につながる影響も与えた時代であった。

※自然環境や生命の複雑な仕組みを「複雑系」という。

 

q.基本的人権

○「基本的人権」とは、「生まれながらに人間ならだれもが持つ権利」のことである。体罰・差別的発言・過度に厳しい校則なども人権の侵害に当たる。言い換えれば、「互いの自由を尊重して共存するための権利」である。

○日本では法律を「上から押し付けられるもの」と考えることが多いが、法律は「みんなが納得して合意するルール」である。実態に合わない法律は話し合いで変えられるものである。

※「子どもの権利条約」は、1989年に国連で採択された国際条約であるが、日本では1994年にこの条約を批准した。

r.法と制度

〇法とは、権力による強制を伴った社会的規範の体系である。

〇日本人は、契約よりも口約束・義理人情・世間常識を好む傾向がある。

  〇応報刑ではなく、犯罪者の社会復帰を目指す、教育刑の考え方が主流である。これは、生きる権利でもある。cf.死刑廃止論

 

s.文学や絵画などの「芸術」の役割

○芸術は感情を表現するだけのものではなく、人間性について考えさせ、社会を変える力を持つ。cf.カタルシス追体験、作品作家論、テクスト分析。

○芸術作品は、作者が「自分だけのものの見方」「世界のとらえ方」を独自の方法で表現したものである。それを理解することは、自分にとって「新しいものの見方」を知ることになる。それが人間についての発見や感動をもたらし、結果として、癒しや励ましにもなる。

○美術での「印象派」「立体派」「超現実主義」などのように、芸術家の考え方は、「新しい思想」として他の分野にも影響を与えている。

 

t.若者の生き方

○若い世代が、これまでの日本を変える可能性がある。

○現代の若者と年上の世代がもっとも対立するのが、「他人に対する思いやりがない」という点である。若い世代は、他者への思いやりを忘れずに、新しい時代を切り開くような主張をすることが大事である。

※さまざまな人々が異質な他人を尊重しながら共同生活するあり方を「公共性」と呼ぶ。

【参考資料2】「文部省国語調査室編の句読点の使い方」

 

1)「。」(マル)〔句点〕の使い方

1マルは文の終止にうつ。正序・倒置・述語省略など、その他、すべての文の終止にうつ。

(例)春が来た。出た、出た、月が。どうぞ、こちらへ。

2「 」(カギ)の中でも終止にうつ。(省略してもよい)

(例)「どちらへ。」「上野まで。」

3引用語にはうたない。

(例)これが有名な「月光の曲」です。

4引用語の内容が文の形式をなしていても簡単なものには、うたない。

(例)「気をつけ」の姿勢でジーット注目する。

5文の終止で、カッコをへだててうつことがある。

(例)このことは、すでに第三章で説明した(五七頁参照)。

6付記的な一節を全部カッコでかこむ場合には、もちろんその中にマルが入る。

(例)それには応永三年云々の識語がある。(この識語のことについては後に詳しく述べる。)

2)「、」(テン)〔読点〕の使い方

1テンは、第一の原則として文の中止にうつ。

(例)父も喜び、母も喜んだ。

2終止の形をとっていても、その文意が続く場合にはテンをうつ。ただし他のテンとのつり合い上、この場合にマルをうつこともある。

(例)父も喜んだ、母も喜んだ。

3テンは、第二の原則として、副詞的語句の前後にうつ。その上で、口調の上から不必要なものを

消すのである。

(例)昨夜、帰宅以来、お尋ねの件について、当時の日誌を調べて見ましたところ、やはり、

そのとき申し上げた通りでありました。

   お寺の小僧になって間もない頃、ある日、おしょうさんから大そうしかられました。

   ワタクシハ、オニガシマヘ、オニタイジニ、イキマスカラ、

〔付記〕この項の趣旨は、テンではさんだ語句を飛ばして読んでみても、一応、文脈が通るよ

うにうつのである。

これがテンの打ち方における最も重要な、一ばん多く使われる原則であって、この原

則の範囲内でそれぞれの文に従い適当に調節するのである。なお、接続詞、感嘆詞、

また、呼びかけや返事の「はい」「いいえ」など、すべて副詞的語句の中に入る。

4形容詞的語句が重なる場合にも、前項の原則に準じてテンをうつ。

(例)くじゃくは、長い、美しい尾をおうぎのようにひろげました。

   静かな、明るい、高原の春です。

5右の場合、第一の形容詞的語句の下だけにうってよいことがある。

(例)まだ、火のよく通らない、生のでんぷん粒のあるくず湯を飲んで、村はずれにある、う

ちの雑木山を開墾しはじめてから、

6語なり、意味なりが付着して、読み誤る恐れがある場合にうつ。

(例)弾き終わって、ベートーベンは、つと立ち上がった。

   よく晴れた夜、空を仰ぐと、

   実はその、外でもありませんが、

7テンは読みの間をあらわす。

(例)「かん、かん、かん」

8提示した語の下にうつ。

(例)秋祭、それは村人にとって最も楽しい日です。

   香具山、畝傍山、耳梨山、これを大和三山という。

9ナカテンと同じ役目に用いるが、特にテンでなくては、かえって読み誤り易い場合がある。

(例)まつ、すぎ、ひのき、けやきなど

   天地の公道、人倫の常経

10対話または引用文のカギの前にうつ。

(例)さっきの槍ヶ岳が、「ここまでおいで。」というように、

11対話または引用文の後ろを「と」で受けて、その下にテンをうつのに二つの場合がある。

「といって、」「と思って、」などの「と」にはうたない。

「と、花子さんは」というように、その「と」の下に主格や、または他の語が来る場合はうつ

のである。

(例)「なんという貝だろう。」といって、みんなで、いろいろ貝の名前を思い出してみました

が、

   「先生に聞きに行きましょう。」と、花子さんは、その貝をもって、先生のところへ走

って行きました。

   「おめでとう。」「おめでとう。」と互いに言葉をかわしながら、・・・。

12並列の「と」「も」をともなって主語が重なる場合には原則としてうつが、必要でない限りは省

略する。

(例)父と、母と、兄と、姉と、私との五人で、

   父も、母も、兄も、姉も、

   父と母と兄と姉と私との五人で、

   父も母も兄も姉も

13数字の位取りにうつ。

(例)(ア)一(円)、二三五

   (イ)一、二三四、五六七、八九〇

   (ウ)一二(億)、三四五六(万)、七八九〇

 

【参考資料3】文の接続法

 

市川孝(1978)は、「文を続ける方式」として以下の7項目をあげている(pp.105-106)。このような整理も活用すると、文章の際に役立つ。

 

1接続詞または接続的機能を持つ語句を用いる。

その計画はなかなか面白い。だが、実行は困難だと思う。

そんなことは子供でさえ知っている。いわんや、大人たちの知らぬはずはな

い。

朝から雨だった。そのため、競技会は中止された。

2接続助詞または接続助詞的機能を持つ語句を用いる。

山には雪が降った、里には降らなかった。

力が足りなかったために、結果は思わしくなかった。

3指示語を用いる。

かれは駅前をぶらぶらしていた。それを見た者があった。

4前文の語句と同一の語句を用いる。

窓からは林が見えた。は、夕日に美しく照らされていた。

5連用形中止法を用いる。

兄は作家になり、弟は作曲家になった。

6特殊なことばを用いる。

わたしは返答に困った。そんなことを考えたこともなかったからだ

雨がはげしくなった。風さえ加わってきた。

7単に文を重ねる。

この問題はどう考えたらよいのだろう。わたしにはわからない。

わたしは甘党です。からいものは、ほとんど食べません。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【参考資料4】パラグラフ・ライティングの基本構造と論理展開のパターン

-樋口裕一(2002)・大島弥生他(2005)・吉岡友治(2015)を参照し抄録-

 

(基本構造-論証型パラグラフ-)大事なことは先に述べる。改行の目安は7から8文程度。形式段落の数の目安は、「文字数÷200」を参考にする。

主張

根拠=理由+証拠

      cf.論証の方法

1.データで裏付ける。

2.現場の証言を示す。

3.検証する。

4.体験談を語る。

5.他人の意見を使う。

6.他と比較する。

 

学生がコンピューターの操作に熟達するように、学校側はコンピューターによるレポートを義務化すべきである。なぜなら、義務化によって、学生が従来よりも長時間コンピューターに触れれば、操作は上達しやすくなるからだ。このことに関しては、コンピューターの上級者は1日平均の操作時間が長いことが、雑誌「読売パソ」(2004年1月)の調査によって確かめられている。

 

(応用構造)

 

主張

根拠=理由+証拠

反論の予測反駁または限定条件

 

学生がコンピューターの操作に熟達するように、学校側はコンピューターによるレポートを義務化すべきである。なぜなら、義務化によって、学生が従来よりも長時間コンピューターに触れれば、操作は上達しやすくなるからだ。このことに関しては、コンピューターの上級者は1日平均の操作時間が長いことが、雑誌「読売パソ」(2004年1月)の調査によって確かめられている。たしかに、ただ長時間操作していても、同じ作業の繰り返しでは、操作は上達しないという意見もあるだろう。しかし、多様な操作が必要なレポートを課せば、必ず技術の向上に結び付くはずだ。

 

学生がコンピューターの操作に熟達するように、学校側はコンピューターによるレポートを義務化すべきである。なぜなら、義務化によって、学生が従来よりも長時間コンピューターに触れれば、操作は上達しやすくなるからだ。このことに関しては、コンピューターの上級者は1日平均の操作時間が長いことが、雑誌「読売パソ」(2004年1月)の調査によって確かめられている。実際には、すべての学生が義務化によってコンピューターに触れる時間が大幅に増えるとはいえないかもしれない。しかし、少なくとも、コンピューターに苦手意識を持って触ろうとしない学生にも、義務化は確実に効果があるだろう。

 

著者は、現在行われている、児童を中心とした犯罪に対する安全対策は、効果が認められず、安心に導かれないと述べている。しかし、その見解は間違っている。現在の安全対策は、充分に安心につながる。

なぜなら、数字で効果が確認できなくても、安心は得られるからだ。安心とは、人々の持つ主観的感覚に過ぎない。実際、日本では、犯罪は一貫して減少しているのに、人々は「犯罪が多くなった」という印象を持つ。客観的な数字と主観的な印象とは異なるのだ。

その意味で、この安全対策も、安心をもたらすための対処にできる。まず、何らかの対策を立ち上げておいて、子どもの行方不明事件は稀であることを利用して「対策しているからこそ、これだけ安全なのだ」と逆転させる。事件が起こらない状態が証拠になって、対策は正当化されるだろう。

特に重要なのは、積極的に住民と協力することだ。退職者・高齢者などを動員して通学路の見回りをさせれば、社会に貢献している実感が持つことができて、喜ぶだろう。小学生と友達になるなど、地域社会とのつながりを強める人々も出てくる。このように、自分たちが参加している活動に対して、わざわざ「効果がない」と否定するはずはない。

これは、戦争における宣撫工作と似ている。ある土地を占領したら、そこの住民たちに不安を与えないように、実力者を呼んで安全を保証し、名目上の役割を与えて取り込む。そのようにすると住民は安心して、占領体制に疑問を持たなくなる。それと同じ仕組みなのである。

たしかに、実際に事件が起きたら問題だが、稀にしか起きないなら、当面、このような方法でしのげるはずである。常時、見張られていることに難色を示す住民もいるかもしれないが、そのような意義を申し立てる人は多くない。自分たちは悪いことをしていないから、監視されてもかまわないと思うのは一般的である。生活の中における安心感が第一であり、言論や思想の自由などは気にかけない。その意味で、安全対策は「安心」をもたらすと言えるのである。

 

 

 

 

 

(パラグラフの論理展開のパターン)

 

1.分類・整理する

 

アメリカのプロ野球は、メジャー・リーグとマイナー・リーグから成立している。最上位のリーグであるメジャー・リーグは、ナショナル・リーグアメリカン・リーグとに分かれている。両リーグの間に序列はない。ナショナル・リーグは1876年に8球団で発足し、現在は14球団になった。アメリカン・リーグは1900年に7球団で発足、現在は16球団から構成されている。マイナー・リーグは、メジャー・リーグの各球団系列下のチームで、3A、2A、A、ルーキー・リーグの4つの階層から成立している。マイナー・リーグから順番にメジャーに上がっていく選手もいる一方で、メジャーからマイナーに落ちる選手やその両方を行ったり来たりする選手も多い。

 

最近、学校では学力低下が問題になっている。学力低下について、第一の原因として挙げられるのは、社会全体が、娯楽中心・消費者中心になって、努力することが美徳ではなくなったことだ。第二に、文部科学省の「ゆとり教育」推進によって、競争を和らげて「落ちこぼれ」をなくそうとして、学習内容を削減し、ゆとりを増加させたこと、選択制度を導入したことも原因だ。第三に豊かさのために、人々がハングリー精神を持たなくなったことも大きな原因だ。このような学力低下の結果、若者は競争意識を失い、活気をなくし、エリートが存在できなくなっている。このままでは、日本は新しい技術も開発できなくなってしまう。(→理由を三つ示すフランス式の論理構造)

 

女性の年齢別労働力率について、日本は、アメリカやドイツ、スウェーデンに比べ、三つの特徴を有している。すなわち、30歳代で就労率が一時的に低下すること、30歳代から50歳代にかけて就労率が低いこと、そして、逆に60歳代以降では就労率が高いことである。

第一に、日本人女性の就労率は、30歳代で一時的に低下して、全体としてMの字を成している。20歳代で70%以上あった就労率が、30歳代で60%台まで低下して、40歳代後半で元の就労率に戻る。アメリカやドイツ、スウェーデンでは、このような一時的な落ち込みは見られない。この就労率の一時的な低下は、女性が結婚や出産を機に退職し、育児を終えた頃に再就職しているためだと考えられる。つまり、仕事と育児の両立の難しさをうかがわせる。両立が難しいのは、政府の育児支援体制が不十分なことに一因がある。たとえば、託児施設の充実は遅れている。認可保育園に子どもを入れられないために、無認可の保育園を使っている話はよくある。また、親が無職、つまり、就職前では、保育園に入れられないことも、再就職を困難にしている。

第二に、日本人女性の就労率は、育児の時期を除いても、アメリカやドイツ、スウェーデンに比べてやや低い。アメリカやドイツ、スウェーデンが80%前後であるのに対して、日本は70%台前半と、10%近く低い。この低就労率の背景には、日本人女性の専業主婦志向が考えられる。専業主婦志向は、日本の伝統的、文化的な側面もあろうが、政府の専業主婦支援政策にも一因がある。サラリーマンの専業主婦は税制上の優遇を受けており、年金も優遇されている。中途半端に働くと、税控除や補助金を失って実収入が減る。そうであるのなら、専業主婦の方がよいと考えるのも、もっともなことである。これらの政策が、労働意欲を阻害していると考えられる。

第三に、日本人女性の就労率は、60歳代以降になると、逆にアメリカやドイツ、スウェーデンに比べて、同等あるいは高くなる。60歳代後半では、日本は40%台とドイツより高く、60歳代後半では、10%後半とアメリカやスウェーデンよりも高い。この傾向は、高齢者に対する福祉が不十分であることの表れだと考えられる。日本では、国民年金の100%支給は65歳からだ。国民年金が得られても、その平均支給額は毎月、5.8万円に過ぎない。これでは働かざるを得ない人がいるのも仕方ない。ヨーロッパは、高い税金と引き換えに充実した福祉を提供しているので、直接的に比較はできないが、日本の福祉政策を考えさせるデータと言える。

 

2.一般論を述べたあとで具体的内容を述べる

 

世界の年中行事には、使用する暦によって、日にちが固定のものと毎年変わるものとがある。中国や、東南アジアの中国系の人々は旧正月を盛大に祝うが、これは太陰太陽暦に従うため、毎年日にちが変わる。インドのヒンドゥー教徒のディーパバリ、イスラム諸国のイドル・フィトリ、ユダヤ教徒のローシュ・ハシャナ等も大切な年中行事だが、太陰暦に従っているため、日にちは固定されていない。多民族国家アメリカでは、感謝祭が国民の祝日として毎年11月の第4木曜日に定められ、この日ばかりは国を挙げて祝う。日本で最も重要な年中行事である正月は、明治以来、毎年1月1日と決まっており、大晦日の除夜の鐘や初詣等、宗教色が色濃く残る習慣が大切にされている。日にちの決め方はさまざまだが、このような年中行事にはそれぞれの伝統が綿々と継承されている。

 

3.比較や対比をする

 

今日のバイオテクノロジーの原点ともいえる発酵食品は、洋の東西を問わず、古くから人間に親しまれてきた食べ物であり、健康の増進にも役立っている。西洋ではチーズ、ヨーグルト、ワイン、パン等が、東洋、特に日本では、しょうゆ、みそ、納豆、漬物、日本酒等が何世紀にもわたって人々の日常の食生活を支えてきた。西洋諸国では、完全栄養食品である牛乳から多くの発酵食品が生まれている。その1つであるヨーグルトは、カルシウムや鉄分の消化吸収を助け、腸の働きを活発にし、老化防止、免疫力の向上にも役立つ。一方、日本では、良質のたんぱく質、カルシウム、ビタミンB1、食物繊維等を豊富に含む大豆から多くの発酵食品が作られている。その中でも味噌は、がん予防、胃潰瘍の防止、コレステロールの抑制、消化促進作用、老化防止、整腸作用等の働きがあるといわれている。このように、多くの長所を持つ発酵食品は、長く世界の人々の健康を支え続けてきている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【参考資料5】書き言葉の特徴

 

Ⅰ書きことばの条件

a.書き手と読み手が物理的に同じ場面にいないこと。

b.書き手と読み手がその場で対面していないこと(または対面している意識が薄いこと)。

c.書き手は書く内容をあらかじめ吟味することができ、聞き手を意識しつつも、書き手の一存で文章展開が決定されること。

d.文字は保存ができ、読み手は文章を繰り返し読むことができること。

 

Ⅱ書きことばの特徴

1表記や句読法、記号(括弧や引用符、「-」「・・」「!」など)が伝達上大きな役割を果たす。ひらがな、カタカナ、漢字表記の別がニュアンスの違いを生み出すことがある。

(例)先生・センセイ

2書き手と読み手が伝達場面を共有しないため、言語以外の要素への依存度はかなり低い。書き手は言葉だけで意図が十分に伝わるように配慮する。

3日常的になじみがない、文章特有の語彙が用いられる。(例)小生

4音では区別することの困難な同音異義語も用いられる。(例)私立・市立 創造・想   

 像

5特別な意図のない限り、語彙は標準語を用いることが多い。

6語彙は縮約されず、正規の形が用いられる。俗語も少ない。

7感動詞、間投助詞、終助詞はほとんどない。

8複雑な文構造も許容される。話しことば(会話文)にくらべ、一文が長い。

9省略や倒置表現など、文法的に不整合な文は避けられる。

10待遇表現は少なく、中立的な表現が多い。例えば、聞き手を意識した「です・ます」体はあまり用いられず、「だ・である」体が主流である。

11手紙文のように相手に語り掛ける調子の文章では、文体が話しことば的になるが、話しことばより少し改まった言葉遣いになりやすい。(口頭ではくだけた言葉遣いをする友人にたいして「です・ます」体で文章を書くなど)

12談話展開が論理的で、不必要な反復や言い換えは避けられる。

 

Ⅲ書きことばと話しことばの差異の原因

 

1即時性 話し言葉は現場の会話時に使用されるため、相手にすぐ返事する即時性が要求される。そのため、文の長さは比較的短く、自分の頭にある語彙が使われる。しかし、書き言葉には即時性が要求されていないため、辞書などもしながら、考えを深めたり、推敲したりすることができる。書き言葉は比較的に永続性・客観性を持つ。

2対人性

話し言葉は、対人性が強いため、外部環境に左右されやすい。そのため、感動詞、男性語、女性語などの言葉が多く使われ、文も短く、倒置、中断などの表現が多く使用される。そして、相手と対面しているために、直接的な表現などは遠慮されるため、婉曲的な表現が好まれる。それに対して、書き言葉は外部条件に左右されにくい。

3規範性

話し言葉に個人差がある。たとえば、若い世代は文法の規範性などに頓着しないことが多く、「ら抜きことば」「れ足すことば」「さ入れことば」「マニュアルことば」などが使用される。また、新しい単語もよく作られる。それに対して、書き言葉は保守的である。

4音声情報

話し言葉では、聞き手は話し手のアクセント、声の大きさ、スピード、ジェスチャーや表情などから相手の意味を知ることが可能である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【参考資料6】悪文にならないための心得

 

1.一文章一主語で、一文を短くし、短い文章を連ねる。

 

空中窒素の人工固定の道が開けてから、空気中の窒素は最大の資源となったわけだが、現在の空気中の80%というその量は、今後100万年間、つまり人類が地球上に姿を現してから現在にいたるまでとほぼ同じ期間、これから後肥料として使えるほどの量である。

 

空中窒素の人工固定の道が開けてから、空気中の窒素は最大の資源となった。窒素は現在の空気中の80%を占めている。この量は、今後100万年間、人類がこれを肥料として使えるほどの量である。100万年といえば、それは人類が地球上に姿を現してから現在にいたるまでとほぼ同じ期間である。

 

日本の原油輸入は8割以上が長期契約となっており、中東ドバイ原油の平均価格を基準に決められる契約形態が大部分である。

 

日本の原油輸入は8割以上が長期契約となっている。そのうち、中東ドバイ原油の平均価格を基準に決められる契約形態が大部分である。

 

高齢社会の進展に伴って年々膨張を続ける社会保障財政に対し根本的な対策を求められている政府は、今度の国会で関連法の修正法案を提出する方針だ。

 

政府は、今度の国会で関連法の修正法案を提出する方針だ。高齢社会の進展に伴って年々膨張を続ける社会保障財政に対し根本的な対策を求められているためである。

 

2.主語と述語とを接近させ、形容詞や副詞はかかる言葉にできるだけ近づける。

 

だから私は今度の川崎の予知連の発表はいろいろ言われているけれども、トータルで見れば成功だったと思う。

 

今度の川崎の予知連の発表はいろいろ言われている。しかし、トータルで見れば、成功だったと私は思う。

 

おそれいりますが、都合によって裏門を閉じていますので、表門へおまわり下さい。

 

都合によって、裏門を閉じております。おそれいりますが、表門の方へおまわり下さい。

 

近年行われたウンカの発生時期についての研究からも・・

 

ウンカの発生時期については近年行われた研究からも・・

 

国内部分については、建設機械市場において、新製品などの売り上げ増加はあったが、引き続き建設工事の減少があったことから、全体としては売上高が減少した。

 

国内部分については、全体としては売り上げ高が減少した。建設機械市場において、新製品などの売り上げ増加はあったが、引き続き建設工事の減少があったからである。

 

3.主語と述語との対応に注意する。

 

私は、日本の経済もゼロ成長期に入りました。

 

私の考えでは、日本の経済もゼロ成長期に入りました

 

日本の経済もゼロ成長期に入った、と私は考えます

 

新サービスはインターネット上で話題となったうえ、実際に導入した先からも好評を博したことにより、前年度比15%増の売り上げを期待しています。

 

新サービスはインターネット上で話題となったうえ、実際に導入した先からも好評を博したことによって、前年度比15%増の売り上げが期待されています

 

低価格を「売り」とする企業の収益構造を調べたら、安さの秘密は従業員にサービス残業を強いていた。

 

低価格を「売り」とする企業の収益構造を調べたら、安さの秘密は従業員にサービス残業強いていることにあった

 

4.曖昧な表現にならないようにする。

 

アナウンサーだったA氏のよき伴侶、B夫人はA氏のよき飲み友達でもあるらしい。

 

A氏はアナウンサーだった。そのA氏のよき伴侶、B夫人はA氏のよき飲み友達でもあるらしい。

 

法改正で相当の規制が出てくるが、マネーロンダリングとかに関してはいいのかもしれないが、国がビットコインにお墨付きを与えたという認識が広がってしまうのではないかという危惧がある。

 

法改正で相当の規制が出てくるが、マネーロンダリングとかに関してはいいのかもしれない。しかし、国がビットコインにお墨付きを与えたという認識が広がってしまうのではないかという危惧がある。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【参考資料7】敬語に関する国語審議会・文化庁の答申

 

「これからの敬語」(昭和27年4月14日に出された国語審議会建議)

 

  1. 人をさすことば1自分をさすことばとしては、「わたし」を標準の形とする。(相手をさすことば)
  2. 「あなた」を標準の形とする。
  3. 2「わたくし」はあらたまった場合の用語とする。
  4. (自分をさすことば)
  5. 敬称2「さま(様)」は、あらたまった場合の形、また慣用語に見られるが、主として手紙の宛名に使う。4社会人としては原則として「さん」を用いる。三、「たち」と「ら」2「ら」は書き言葉で「A氏、B氏、Cら」のように誰にでも使ってよい。(つけてよい場合)お帽子はどれでしょうか。2真に尊敬の意を表す場合。先生のご出席おはようごはんおいでになる(すべて「お―になる」の型)4自分の物事ではあるが、相手の人に対する物事である以上、それをつけることに慣用が固定している場合。お願いご遠慮(省けば省ける場合)(お)米・(お)菓子・(お)茶碗・(お)昼(お)ビール・(お)くつした・(ご)芳名(ご)卒業された(「卒業された」「ご卒業になった」が正しい)これからの対話の基調は、「です・ます」体としたい。動詞の敬語法には、およそ三つの型がある。受ける―Ⅰ受けられる・Ⅱお受けになる・(Ⅲお受けあそばす)「お―になる」の型を「お―になられる」という必要はない。七、形容詞と「です」八、あいさつ語おはよう。おはようございます。いってきます。いってまいります。九、学校用語(お)教室・(お)チョ―ク・(お)机十、新聞・ラジオの用語政治的記事には「氏」を中心に使う。十一、皇室用語「玉体・聖体」は「おからだ」「宝算・聖寿」は「お年・ご年齢」「勅語」は「おことば」 文化審議会の5分類案Ⅰ 従来の敬語の分類三分類・・尊敬語・謙譲語・丁寧語Ⅱ 文化審議会の敬語の五分類案―菊地康人『敬語』(講談社)-文化庁文化審議会は、平成19年2月「敬語の指針」を答申1尊敬語2謙譲語Ⅰ3謙譲語Ⅱ(丁重語)4丁寧語5美化語  基礎編 ビジネス国語7レッスンレッスン2知ってるつもり?学び直し国語の基礎  編集部レッスン4接続詞はないのが普通  石黒圭レッスン6外資系コンサルの構造的メール法  山崎康司B『仕事のための5つの基礎力』日経ビジネス アソシエ2015仕事のルール・マナーリーダー力 ・・人間関係の古典的存在、企業研修でも数多く採用された世界的名著。1.盗人にも五分の理を認める3.人の立場に身を置く1.誠実な関心を寄せる3.名前を覚える5.関心のありかを見抜く人を説得する十二原則2.誤りを指摘しない4.穏やかに話す6.しゃべらせる8.人の見になる10.美しい心情に呼びかける12.対抗意識を刺激する1.まずほめる3.自分の過ちを話す5.顔をつぶさない7.期待をかける9.喜んで協力させるbティーブン・コヴィー『7つの習慣』習慣の育成のための三つの要素第一の習慣 主体性を発揮する第三の習慣 重要事項を優先する第五の習慣 理解してから理解される第七の習慣 刃を研ぐ(解説)
  6. 認知心理学者のダニエル・カーネマンは、「行動経済学」を提唱して、心理学者でありながら2002年にノーベル経済学賞を受賞した。ダニエル・カーネマンは、人間の意思決定が経済に多大な影響を及ぼすとして、その著書『ファスト&スロー』が世界中で広く読まれたことは記憶に新しい。これを契機に、心理学者によるビジネス心理学の研究、著作が次々と著されるようになった。
  7.  
  8. 第六の習慣 相乗効果を発揮する
  9. 第四の習慣 Win-Winを考える
  10. 第二の習慣 目的を持って始める
  11. =知識(何をするか、なぜするか)・スキル(どうやってするか)・やる気(実行したい気持ち)
  12. ・・ビジネス心理学として世界的に読まれた名著→ジェームス・スキナー『成功の9ステップ』
  13.  
  14. 8.激励する
  15. 6.わずかなことでもほめる
  16. 4.命令をしない
  17. 2.遠まわしに注意を与える
  18. 人を変える九原則
  19. 11.演出を考える
  20. 9.同情を寄せる
  21. 7.思いつかせる
  22. 5.「イエス」と答えられる問題を選ぶ
  23. 3.誤りを認める
  24. 1.議論を避ける
  25. 6.心からほめる
  26. 4.聞き手にまわる
  27. 2.笑顔を忘れない
  28. 人に好かれる六原則
  29. 2.重要感を持たせる
  30. 人を動かす三原則
  31. aデール・カーネギー『人を動かす』
  32. 調整力
  33. プレゼン・アピール力
  34. 伝える力
  35. レッスン7推敲なくして明文なし  藤沢晃治
  36. レッスン5パラグラフを活用する  倉島保美
  37. レッスン3米国の大学生が学ぶ「説得力」  吉岡友治
  38. レッスン1論理力がすべての基本だ  野矢茂樹
  39. A「特集学び直し国語力」『週刊東洋経済』2017.10.7
  40. 【参考資料】ビジネス国語・ビジネス心理学
  41. 物事を美化して述べるもの。
  42. 話や文章の相手に対して丁寧に述べるもの。
  43. 自分側の行為・物事などを、話や文章の相手に対して丁重に述べるもの。
  44. 自分側から相手側または第三者に向かう行為・物事などについて、その向かう先の人物を立てて述べるもの。
  45. 相手側または第三者の行為・物事・状態などについて、その人物を立てて述べるもの。
  46. →「1尊敬語・2謙譲語・3丁寧語」の三分類を、五分類にする案を提出。
  47.  
  48.  
  49. 二分類・・素材敬語(尊敬語・謙譲語)と対者敬語(丁寧語)
  50.  
  51.  
  52. 「朕」は「私」
  53. 「叡慮・聖旨」は「おぼしめし・考え」
  54. 「天顔・竜顔」は「お顔」
  55. 昭和22年8月、宮内庁当局との報道関係との間に基本的了解が成り立っていた。
  56. 犯罪容疑者には敬称を省略してもやむをえない。
  57. 敬称も「さん」を使うのは妥当である。
  58. 2「です・ます」体が望ましい。
  59. 1「お」の使いすぎに注意。
  60. いただきます。ごちそうさま。いってらっしゃい。
  61. おやすみ。おやすみなさい。
  62. あいさつ語は決まったままでよい。
  63. これまで問題になっていた「大きいです」「小さいです」などは、認めてよい。
  64. あそばせことばは、おいおいすたれる形であろう。
  65. 「れる」「られる」は簡単であるので、将来性がある。
  66. 書く―Ⅰ書かれる・Ⅱお書きになる・(Ⅲお書きあそばす)
  67. 六、動作の言葉
  68. 五、対話の基調
  69. (ご)調査された(「調査された」「ご調査になった」が正しい)
  70. (省くほうが良い場合)
  71. 女性の言葉としては「お」がつくが、男子の言葉としては省いていえるもの。
  72. ご報告いたします
  73. お礼
  74. お手紙(お返事・ご返事)をさしあげましたが
  75. ごらんになる(すべて「ご―になる」の型)
  76. ご苦労さま
  77. おかず
  78. 3慣用が固定化している場合。
  79. 先生のお話
  80. ご意見はいかがですか。
  81. 1相手の物事を表す「お」「ご」で、それを訳せば「あなたの」という意味になるような場合。
  82. 四、「お」「ご」の整理
  83. 1「たち」は現代語としては、「わたしたち」と自分のほうにつけてよい。
  84. 5職場用語としては、「先生」「局長」「社長」「専務」「課長」などには「さん」をつけて呼ばない。
  85. 3「氏」は書き言葉用で、「さん」を話し言葉用として使う。
  86. 1「さん」を標準の形とする。