NLPとノーム・チョムススキー、ミルトン・エリクソン

1.ノーム・チョムスキー生成文法の言語観とコミュニケーションへの応用-聴き方-

「言葉の裏で省略、歪曲、一般化が行われている」→これらを復元する質問法

 

メタモデル

 

メタモデル1「不特定名詞」

「誰が」「いつ」「誰に」「何を」「どこで」などが具体的に示されていない表現を「不特定名詞」という。これらを明らかにすることで、正確なコミュニケーションになる。

(会話例)

みんなは誰?どんなお客様?いつごろ?どんな人たち?何のよさ?

 

メタモデル2「不特定動詞」

どのようにしたのかが、具体的に示されていない行動や感情の表現を「不特定動詞」という。「どうやって」「どうして」を引き出すと、その行動や感情について省略されてしまった情報を相手と共有することができる。

(会話例)

どの部分をどんなふうに頼めばいいのかな?緊張するのはどうしてなの?調べるのは増加数かな、増加率かな?

 

メタモデル3「比較」

比較の対象を明らかにすることで、客観的に評価し、理解することができる。

(会話例)

誰と比べて下手だと思うの?どのレベルの中で最高ということ?何に比べて能率がよくなるのですか?

 

メタモデル4「判断」

判断の基準が明確になることで、評価の妥当性が判断しやすくなる。

(会話例)

それは誰の評価なのですか?たしかに良いアイデアだと思いますが、こうしたアイデアの良し悪しは、どんな基準で判断しましょうか?

 

メタモデル5「名詞化」

さまざまなプロセスをひとくくりにして、静止した名詞に置き換えることで、抽象的表現を具体的プロセスにしていくことで、あいまいな理解しかできなかったものが、より具体的な情報になる。

(会話例)

どんな商品を扱っているの?彼女の役割は?部下に対する接し方がうまいの?失礼だけど、何かお金に困っているの?ご家族と暮らしているの?責任を分担できる兄弟はいるの?どんな目標を設定して、何を努力しているの?その努力で何が改善されるの?

 

メタモデル6「等価の複合観念」

本来イコールではない内容なのに、同じ意味(等価)になっているパターンを質問によって、あいての発想を自由にするパターン。

(会話例)

上司は私にうるさく報告を求めます。私を信頼していないのだと思います。→報告を求めることは、信頼していないことを意味するのですか?

彼は私の眼を見て話しません。私に関心がないのです。→眼を見ないからって、関心がないと言えるのでしょうか?

 

メタモデル7「前提」

暗黙のうちに何らかの前提が隠れている場合がある。隠れた前提にズレがあると、ミスコミュニケーションになる。隠れた前提を明確にしておくことは重要である。

(会話例)

目的地まで、どちらの道をいくのがはやいだろう。→車で行くという前提が隠れている。

なぜ、彼には無理だとお考えですか?→彼は未熟で力不足だという前提が隠れている。

服の色を選ぶところまでは考えていないのですが。→服を買うという前提が隠れている。

 

メタモデル8「因果」

因果関係をとらえなおすことで、思い込みをはずし、柔軟にする。また、気づきを促したりするのが目的である。

(会話例)

最近、十分な休みが取れていないから、仕事の調子がでない。

→休みが取れていないと、具体的にどんなふうに不調の原因になるの?

今日は雨が降っているから、売り上げが下がる。

→雨が降ると、具体的にはどんな理由で売れなくなるの?

 

メタモデル9「憶測(読心術)」

本人から気持ちを聞いたわけでもないのに、他人の気持ちや考え方を決めつけていることがあり、これを憶測や読心術と呼ぶ。このパターンを外す質問も有効である。

(会話例)

どうして彼が傷つくとわかるのですか?

どうしてあなたの思いが伝わっていると思うのですか?

 

メタモデル10「可能性の叙法助動詞」

「できない」「不可能だ」「無理だ」などのcan notで、その人が無意識に限界を決めてしまっているものを相手に問いかけて反論させ、問題点を明らかにする手法である。

(会話例)

経験が豊富なあなたが、どうして社長をサポートできないと思うの?

頼んでみたら、どういう不都合があるかな?良好な関係なんだから、相談するだけしてみない?

 

メタモデル11「必要性の叙法助動詞」

より詳しい情報を引出し、相手に本当は自分も望んでいるのに、無意識に制裁を加えている状態(すべきだ・すべきでない・しなければならない・must・should・must not)に気付かせ、束縛から解放することが目的である。

(会話例)

もしあなたがそうしないと、どんなことが起こるのですか?

もしあなたがそうしたら、どんなことが起こるのですか?

 

メタモデル12「普遍的数量詞」

「みんなが」「誰でも」「すべて」「いつも」「必ず」「決して-ない」「いつも-ない」といった例外を排除してしまう表現を、「普遍的数量詞」という。この思い込みに例外はないかを相手に思い起こさせる手法である。

(会話例)

客観的に見て、必ず、いつも無視しているのですか?

本当に、ただの一度もうまくいったことがないのですか?

全員がそうなのだと思いますか?

 

 

2.ミルトン・エリクソンの言語催眠とコミュニケーションへの応用-話し方-

リチャードバンドラー+ジョングリンダー『催眠誘導』・・言語学者と心理学者の共同研究

肯定表現・そして(and)・かもしれない(may)

       ※デール・カーネギー『人を動かす』『道は開ける』←ウイリアム・ジェームズ

徳川夢声『話術』

 

【ミルトンモデル】

 

ミルトンモデル1「名詞化」

「問題」「解決」「体験」「愛情」など思考や行動のプロセスを名詞にして表現すると、具体的な情報が大幅に省略される。そのように具体的に触れないことで、聞き手が自由に解釈することができる。つまり、ことばを聞いた人が無意識に、自分にとってもっともしっくりする意味をことばに与えるのである。

(会話例)

あなたは多くの可能性を持っています。

彼は愛情を示しているのではないかしら。

問題の解決方法をあなたは知っているはずだ。

 

ミルトンモデル2「不特定名詞」

「誰が」「いつ」「どこで」「誰に」「何を」などを具体的に示さない名詞(人は・私たちは・いつか・いつでも・それ・そのこと)を用いないことで、自分に都合よく解釈する。それによって自分が知りたいと思っていることに無意識にアクセスする。

(会話例)

人は好きなときに、好きな場で学ぶことができます。

あなたはいずれ、そのことに気づくでしょう。

 

ミルトンモデル3「不特定動詞」

動き、体験、変化、学びの具体的な内容や方法を特定しない動詞(動く・変わる・体験する・学ぶ・思う)を用いることで、聞き手が自分にとって意味ある内容を思い浮かべる。

(会話例)

よくやってくれた。

今こそ、歴史を動かすときだ。

今日までの体験を通じて、あなた方は変わりました。

よい学びの機会になったことと思います。

 

ミルトンモデル4「基準の省略」(比較・判断)

「より」「さらに」などの比較の副詞を用いるが、何に比べて、どの程度といった基準を省略することで、比較対象や判断基準を自由にイメージさせることで、意識の抵抗なく聞き手の心にすんなりと入っていく表現である。

(会話例)

より細やかなサービスを目指そう。

さらにおいしくなりました。

 

ミルトンモデル5「連結語」

現在起こっていることと、将来起こってほしいことを「そして」「しているとき」「すると」「によって」という言葉でつなぎ、起こってほしいことへとクライアントを導く。連結語で結びつけたメッセージは、聞き手の無意識に抵抗なく訴えかけることができる。

(会話例)

いま、あなたは私の声を聴いています。そして、呼吸がとても穏やかになっていくのを感じています。

こういう車に乗ったら、ワンランク上の満足感が得られますよ。

あなたはこの車に乗っています。そのとき、あなたはワンランク上の満足感を得ているでしょう。

このコスメで自分らしさを出すと、みんなに注目されるよ。

あなたはこのコスメを使っています。それによって、自分らしさを演出しているのです。すると、あなたはみんなに注目されます。

 

ミルトンモデル6「マインドリーディング」

セラピストは、クライアントの考えが読めているかのような表現の駆使をするときがある。ラポールを築く上での有効な方法である。「私はあなたの気持ちをわかっています。そして、その気持ちを私も共感していますよ」という二段階のメッセージとして伝わる。

(会話例)

私がこれらか言うことに、あなたはきっと関心があるはずです。

今抱えている課題に、自分の内面的な問題が関わっていると思うのですね。

あめでとうございます。お喜びもひとしおでしょう。

そんな失礼なこと、許し難いと思われたでしょうね。

災難に遭われて、さぞつらかったでしょうね。

 

ミルトンモデル7「時の従属」

「-の前に」「-の後に」「-の間」などの言葉で、聞き手に前提を認めさせる。

(会話例)

君が売上目標を達成する前に、相談しておきたいことがある。→売上目標を達成することを前提としている。

 

ミルトンモデル8「序数」

「初めに(最初に)」「次に(二番目に)」などの言葉で、聞き手に前提を認めさせる。

(会話例)

どの地区からライバルを追い落とそうか。初めはA地区がいいか、B地区か。→ライバル社を追い落とすことを前提としている。

 

ミルトンモデル9「あるいは、または、さもなければ」

「あるいは」「または」「さもなければ」などの選択させることばは、それ以外の可能性を強く打消す言い方になる。

(会話例)

この仕事を御社にお願いしたいのですが、今週中に手をつけていただけるのでしょうか、それとも来週以降まで待ったほうがいいですか?

 

ミルトンモデル10気づきの叙述語

「気づく」「わかる」「知っている」などのことばを使って質問すると、その前に述べた内容が強力な前提となる。

(会話例)

あなたは、この分野での自分の能力に気づいていますか?→自分に能力があることを認めさる

この地域でわが社のブランドに対する好感度が高いと君は知っていますか?→自社のブランド力が高いことを認めさせる

 

ミルトンモデル11副詞と形容詞

どのように、またはどの程度など、状態を示す修飾的表現(副詞・形容詞)は、修飾されることばを前提として使うものである。

(会話例)

その製品を出荷するには、どうしたらいいだろう?→出荷できるかどうかが問題になっている

その製品を速やかに出荷するには、どうしたらいいだろう?→出荷することがすでに前提になっている

 

ミルトンモデル12時制と副詞の変更

「始める」「終わる」「続ける」「やめる」「まだ」「すでに」「もはや」などのような、時の経過を示すことばや、何かが行われる(または行われている)ことを前提としている。

(会話例)

あなたがこのプロジェクトに関心をもち始めたのはいつですか?→「プロジェクトに関心を持っていること」が前提

君はもうC社に売り込みをかけているかな?→「C社に営業をかけること」が前提

 

ミルトンモデル13論評的形容詞と副詞

話し手が「必然的に」「運よく」「喜んで」「幸いに」などの論評的形容詞と副詞を使うと、聞き手はそれを前提として受け入れるため、説得力が増す。

(会話例)

運がいいことに、我々はこのマーケットで勝ち抜くために何が求められているかをすでに知っている。

幸いなことに、この商品はD社が開発中のスペックをすでに盛り込んでいる。

 

ミルトンモデル14普遍的数量詞

「すべて」「どんな-でも」「いつも」「誰でも」などの普遍的数量詞を用いて表現すると、聞き手の側は言われた内容に強い印象を抱く。

(会話例)

先生のお話はいつも勉強になります。

誰でもそう感じるのではないでしょうか。

 

ミルトンモデル15必要性の叙法助動詞

「できない」「しなければならない」などのことばを使って、ほかの選択肢を打ち消す表現で、素直に従いたくなる表現である。

(会話例)

人の上に立つものとして、ここで弱音を吐くことはできませんよね。

場合によっては、いやなライバル企業とも手を組まなければならないからいでしょう。

 

ミルトンモデル16挿入命令

埋め込まれた命令のことで、「-してもかまいません」「-していいです」など、聞き手に気付かれずに指示や命令を伝えるパターンである。

(会話例)

夕飯の前に宿題をやってしまってもかまわないよ。→勉強しなさい

君がいつE社を訪問するかは自由だが、私は、あの会社もけっこう有望な取引先になると思っているんだ。→E社に行ってみなさい

 

ミルトンモデル17アナログマーキング

会話の中に織り込んだ「挿入命令」を際立たせるために、非言語的マークをつけることである。

(具体例)

埋め込んだ指示内容の前後に間をとる。

前後のことばより大きな声でゆっくりと話す。

トーンを変える。

意図的に手を動かす。

眉毛を上げてみせる。

 

ミルトンモデル18質問挿入

文中にさりげなく問いかけや質問を埋め込む話法で、自然に聞き手から回答を引き出すもので、相手が自分からオープンに話しやすくなる雰囲気をつくる質問の仕方である。

(会話例)

あなたが今の待遇に満足しているかどうか、気になっていました。

 

ミルトンモデル19否定的命令

「ーしないでください」という否定的な命令を相手に伝えることで、聞き手は「-すること」を意識してしまう方法。

(会話例)

仕事が楽しくてたまらないとは、考えないでください。→楽しく働いている自分を意識してしまう

今どうしても手に入れたいと思うものを、いったん忘れてください。→自分の欲しいものを思い浮かべてしまう

 

ミルトンモデル20会話的要求

何かしてほしいことを相手に伝えるのに、命令の形ではなく、質問の形で伝えるパターンである。

(会話例)

伝票は出してもらっていたかな?

明日までに返事をいただけるでしょうか?

この前いただいたサンプルよりも、色を濃くしていただけますか?

 

ミルトンモデル21曖昧

催眠療法のテクニックとしての心得は、曖昧にすることである。

○発音が似ていて違う意味を持つ言葉を、どちらの意味にも取れるように使う。

○修飾語の指している範囲や、「わかる」「知っている」などの言葉が示す範囲を曖昧にすることで、いくつかの意味に取れるように話す。

 

ミルトンモデル22比喩

人や物の特徴を、別の何かにたとえて表現するものである。この比喩によって、聞き手の印象を深めることとなる。

(会話例)

カミソリのような変化球の切れ味です。

彼なら、機関車のように力強くチームを牽引してくれるに違いない。

 

ミルトンモデル23事実違反

事実としてはありえない、突飛なことをいうメタファーにより、聞き手は自分なりに解釈しようとする。

(会話例)

夜を徹して作業したから、ついにパソコンが怒りだして、データサーバーはふて寝してしまった。

あまりの暑さに、扇風機も汗だくでしょう。

 

ミルトンモデル24引用

人の言葉や、昔から言い習わされてきた格言・ことわざなどを引用するのも効果的なメタファーである。

(会話例)

「人から批判されることも恐れてはならない。それは成長の肥やしとなる」という、エジソンの言葉もあるしね。

 

ミルトンモデル25物語

神話や伝説、民話や寓話、偉人伝には、さりげない強いメッセージが込められていることが多い。その話を子供に聞かせてあげると効果的である。